人手不足解消や生産性向上を目指す中小企業を支援する「中小企業省力化投資補助金(省力化補助金)」。当補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2つの枠組みが存在します。
前回解説した「カタログ注文型」が指定カタログから製品を選ぶシンプルな仕組みであるのに対し、「一般型」は事業者が自由に設備を選定でき、より大型の投資にも対応できる柔軟な枠組みです。
この記事では、省力化補助金「一般型」の概要や補助上限額、申請要件、そしてカタログ注文型との違いや計画書作成のコツを詳しく解説します。
目次
1. 省力化補助金「一般型」の補助対象経費
一般型で補助対象となる経費は、必須となる「機械装置・システム構築費」と、それに付随する「その他の経費」で構成されています。
① 機械装置・システム構築費(必須)
- 機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
- 専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
- これらと一体で行う改良または据付けに要する費用
② その他の経費(任意)
- 運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費
💡 補足 上記②の経費も補助対象となりますが、運搬費を除く経費には「補助対象経費総額の1/2または1/3まで」といった上限制限が設けられています。詳細は公募要領をご確認ください。
2. 補助上限額・補助率(カタログ注文型との比較)
一般型は、カタログ注文型に比べて補助上限額が大きく引き上げられており、従業員規模に応じた細かな区分が設定されています。
従業員数ごとの補助上限額と補助率一覧
| 従業員数 | 一般型の補助上限額 ( )内はカタログ型 | 一般型の増額上限額 ( )内はカタログ型 | 補助率 |
| 5人以下 | 750万円 (500万円) | 1000万円 (750万円) | 1/2 または 2/3 |
| 6人〜20人 | 1500万円 (750万円) | 2000万円 (1000万円) | 1/2 または 2/3 |
| 21人〜50人 | 3000万円 (1000万円) | 4000万円 (1500万円) | 1/2 または 2/3 |
| 51人〜100人 | 5000万円 (1000万円) | 6500万円 (1500万円) | 1/2 または 2/3 |
| 101人以上 | 8000万円 (1000万円) | 1億円 (1500万円) | 1/2 または 2/3 |
一般型では「51人〜100人」「101人以上」の区分が新設され、最大1億円までの大規模な省力化投資が可能となっています。
補助率が「2/3」に引き上げられる3つの条件
カタログ型は一律1/2でしたが、一般型では以下のいずれかの条件を満たす場合に補助率が 2/3 に拡充されます。
- 小規模企業者・小規模事業者:
- 常勤従業員数が「製造業・建設業・宿泊業・娯楽業:20人以下」「卸売業・小売業・サービス業:5人以下」の事業者
- 最低賃金近くで雇用する従業員が一定数存在:
- 直近1年間(2024年10月〜2025年9月)において、地域の最低賃金水準で雇用している従業員が全従業員の30%以上存在する月が3か月以上あること
- 再生事業者:
- 事業再生の手続きを行っている事業者(詳細は公募要領を参照)
補助上限額の増額条件と注意点
基本要件に加え、以下の追加要件をすべて満たす計画を策定・実行した場合にカッコ内の「増額上限額」が適用されます。
- ① 1人当たり給与支給総額を年平均成長率 +6.0%以上増加
- ② 事業場内最低賃金を地域最低賃金 +50円以上の水準に引き上げ
⚠️ 注意点 増額申請を行う場合、上記達成に向けた具体的かつ詳細な取り組みを事業計画書に明記する必要があります。達成できない場合は返還規定が適用されるため、実現可能性を踏まえた慎重な計画が必要です。
3. 申請するための基本要件
一般型を申請するには、以下の要件をすべて満たす3〜5年間の事業計画を策定し、交付申請時までに社内表明を行う必要があります。
- ① 労働生産性: 年平均成長率 +4.0%以上 増加(カタログ型は+3.0%)
- ② 1人当たり給与支給総額: 年平均成長率 +3.5%以上 増加(日銀の「物価安定目標」+1.5%)
- ③ 事業場内最低賃金: 地域最低賃金 +30円以上 の水準
- ④ 一般事業主行動計画の公表(※従業員21名以上): 「両立支援のひろば」等で有効な行動計画を公表していること
⚠️ 返還規定について 給与支給総額や最低賃金の目標値を達成できなかった場合、達成率に応じて補助金の返還が求められます。
なお、一般型ではカタログ型で必須だった「製品カタログからの選定」や「販売代理店(ディーラー)との共同電子申請」は不要ですが、手続きにはG-Biz IDプライムが必須となります。
4. 「補助事業計画書」作成のポイント
一般型の申請では、通常の「補助事業計画書」に加えて、専用のWord/Excel様式による「会社全体の事業計画」の提出が求められます。
審査で重視される4つの評価ポイント
- 設備の必要性: なぜその設備が必要なのか、課題との整合性
- 具体的な目標と達成手段: 定量的な数値目標と実効性のあるアクションプラン
- 他社との差別化と省力化プロセス: 原則として2つ以上の設備を組み合わせた省力化モデルの構築
- 将来の展望: 投資後の持続的な成長シナリオ
「会社全体の事業計画(Excel)」との整合性が高評価のカギ
指定Excelシートに数値を入力すると、省力化指数・投資回収期間・付加価値額などが自動算出されます。これらの数値と、Word文章(補助事業計画書)で説明するストーリーや現場の実情が矛盾なく完全に一致していることが採択を引き寄せる重要なポイントです。
5. 採択後に求められる5つの義務(カタログ注文型との比較)
採択された事業者は、補助事業計画書に記載した労働生産性や給与支給総額引き上げといった目標値の達成と、一定期間補助金事務局への実績報告を求められます。
| 義務項目 | 一般型 | カタログ注文型 |
| ① 労働生産性向上 | 年平均 +4.0%以上 | 年平均 +3.0%以上 |
| ② 給与支給総額引き上げ | 1人当たり年平均 +3.5%以上 | 増額申請時のみ必要 |
| ③ 最低賃金引き上げ | 地域最低賃金 +30円以上 | 増額申請時のみ必要 |
| ④ 導入期限 | 採択後 17〜19か月以内 に導入 | 採択後 1年以内 に導入 |
| ⑤ 実績報告 | 設備導入後3〜5年間 | 設備導入後3年間 |
①②③は「カタログ注文型」より高い目標値が設定されていることから、「一般型」の方が敷居が高いことがわかります。
①③は上記「2.圃場上限額・補助率」で示した「増額上限額」で申請した場合は、それぞれ+6.0%以上、+50円以上の達成が必要です。
6. 自社に合った枠組みの選び方と申請のアドバイス
省力化補助金「一般型」は、事業者の業務プロセスに合わせた設備を自由に選定でき、補助率アップや高額補助を狙える魅力的な制度です。
- 一般型が向いている事業者: 独自の生産ラインやオーダーメイド設備を導入したい企業、複数設備を組み合わせて大幅な省力化を図りたい企業、従業員数が多く大規模な投資を予定している企業。
- カタログ注文型が向いている事業者: 単体の汎用設備でシンプルに省力化を図りたい企業、計画書作成の手間をできる限り抑えたい小規模事業者。
一般型はハードルが高い反面、しっかりとした事業計画を組み上げることで事業成長の大きな推進力となります。公募要領の読み込みや計画書作成には相応の準備期間が必要となるため、検討段階から専門家のアドバイスを活用し、余裕を持ったスケジュールで進めることを強くお勧めいたします。
👉 前回の解説:省力化補助金「カタログ注文型」の記事はこちら
⚠️ ご注意 本記事の内容は、執筆時点の公募要領・公式情報に基づいて作成されています。補助金の制度内容や申請要件は公募回ごとに変更・更新される場合があります。実際に申請を検討される際は、必ず[中小企業省力化投資補助金 公式ポータルサイト]等で最新の公募要領をご確認ください。
省力化補助金「一般型」の申請・事業計画書策定のご相談
「自社の投資計画が一般型に適しているか診断してほしい」「2つの設備を組み合わせた省力化プロセスの組み立て方に悩んでいる」など、お気軽にご相談ください。貴社の強みを活かした計画書作成をトータルサポートいたします。