人手不足に悩む中小企業等に向けて、省力化投資を通じて生産性向上や賃上げを目指す国の制度が「中小企業省力化投資補助金(省力化補助金)」です。
当補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2つの枠組みが存在し、計画している投資内容や規模に応じて選択する必要があります。どちらの枠でも、導入する設備本体だけでなく、それに付随する導入経費も補助対象となります。
この記事では、手続きが比較的シンプルで小規模企業にもおすすめな「カタログ注文型」の概要、申請要件、計画書作成のポイントを分かりやすく解説します。
目次
1.省力化補助金「カタログ注文型」の補助上限額と補助率
はじめに補助金でいくら受け取れるのか「補助上限額」と「補助率」を確認しましょう。この補助金は申請企業の従業員数に応じて上限額が変動します。
従業員数ごとの補助上限額一覧
| 従業員数 | 補助上限額 | 増額上限額 | 補助率 |
| 5人以下 | 500万円 | 750万円 | 1/2以内 |
| 6人~20人 | 750万円 | 1000万円 | 1/2以内 |
| 21人以上 | 1000万円 | 1500万円 | 1/2以内 |
補助上限額の増額条件と注意点
補助事業期間終了までに、以下の2つの賃上げ目標を達成する事業計画を作成した場合、カッコ内の「増額上限額」が適用されます。
| 1.事業場内最低賃金を 3.0%以上 引き上げる 2. 給与支給総額を 6.0%以上 引き上げる |
⚠️ ご注意:特段の理由なくこの賃上げ目標が達成できなかった場合、補助金の返還が求められます。増額申請を行う際は、実現可能な計画かどうか慎重に検討することが重要です。
2.申請前に知っておくべき仕組みと3つのステップ
カタログ注文型は、従来型の補助金とは異なり、国が事前に認めた設備と販売事業者(ディーラー)を経由して申請する仕組みになっています。
| 【ステップ1】「製品カタログ」で対象設備を確認 ▼ 【ステップ2】国の指定する「販売事業者(ディーラー)」を選択 ▼ 【ステップ3】ディーラーと共同で「マイページ」を作成し電子申請 |
ステップ1:「製品カタログ」の確認
カタログ注文型は、国が「省力化に著しく貢献する」と認定した製品のみが対象です。製品は事務局の専用ポータルサイト内「製品カタログ」に掲載されています。
・掲載されている設備: カタログ注文型で申請可能
・未掲載の設備: カタログ注文型では申請不可(※次回解説する「一般型」での申請を検討)
導入を検討している製品がカタログに登録されているか、最初に必ず確認しましょう。
ステップ2:対象販売事業者の選択
希望する設備が掲載されていたら、次にその設備を取り扱う「対象販売事業者(指定ディーラー)」を選択します。カタログ注文型では、設備ごとに国に指定されたディーラーから設備を購入する必要があります。
ステップ3:ディーラーとの共同電子申請(G-Biz IDが必要)
申請手続きは、指定ディーラーの協力を受けてオンライン上で行います。
- G-Biz IDの取得: 事前に申請企業側で「G-Biz IDプライム」を取得しておく。
- マイページの作成: 指定ディーラーに依頼し、補助金申請システム上の「マイページ」発行を依頼する。
- 出願: ディーラーと連携して作成した事業計画をもとに、申請企業とディーラー双方がオンライン上で出願ボタンを押すことで電子申請が完了。
3.「補助事業計画書」作成のポイント
申請時に提出する「補助事業計画書」では、主に「人手不足の現状」と「設備導入による省力化計画」の2点の説明が必要です。
1. 人手不足の状態にあることの説明
以下の4つの要件のうち、自社に当てはまるものを1つ選択し、省力化を進める必要性を説明します。
① 平均残業時間要件:直近の従業員の平均残業時間が月30時間を超えていること。
② 離職・退職要件:整理解雇によらない離職・退職により、従業員数が前年度比で5%以上減少(または月の総労働時間が前年同月比5%以上減少)していること。
③ 求人未充足要件:採用活動を行い求人掲載をしたものの、必要な人材の採用に至らなかったこと。
④ その他要件: 上記以外で省力化を推進せざるを得ない事情があること。
※④を選択した場合、例外的な扱いとなり審査長期化の可能性があるため、可能な限り①〜③を選択するのがよいでしょう。
2. 省力化を進めるための具体的な計画の説明
製品カタログから選んだ設備を活用し、後述する「労働生産性の向上目標」を達成するための計画を作成します。具体的には以下の3点を論理的に記載します。
① 導入製品の使用方法:現場でどのように活用するか。
② 期待される省力化の効果:製品の機能・性能によって削減できる業務量や時間。
③ 抽出できた時間・人員の使途:省力化によって生み出された時間や人員を、どのような高付加価値業務へ再配置するか。
4.採択後に企業へ求められる3つの義務
補助金に採択された企業(採択企業)は、設備を導入して終わりではなく、以下の成果・報告義務を果たす必要があります。
1. 年平均成長率(CAGR)3.0%以上の労働生産性向上
設備導入後3年間で、毎年労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を策定・実行する必要があります。
- 付加価値額の計算式: 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
- 労働生産性の計算式: 付加価値額 ÷ 従業員数
※詳しいCAGR計算式や入力フォーマットについては公募要領をご確認ください。
2. 最低賃金と給与支給総額の引き上げ(※増額申請時のみ)
補助上限額の増額申請を行った事業者は、申請時と比較して「事業場内最低賃金 3.0%以上」「給与支給総額 6.0%以上」の増加を達成し、かつ事前にその旨を従業員へ表明(コミット)することが必要です。
3. 期限内の設備導入と3年間の効果報告
- 導入期限: 採択決定後、原則1年以内に申請設備を導入し、事務局へ実績報告を完了すること。
- 効果報告: 設備導入後、3年間にわたり事業効果や稼働状況の年次報告を実施すること(他の主要な中小企業向け補助金と同様の運用です)。
5.「カタログ注文型」のメリットと申請のアドバイス
省力化補助金「カタログ注文型」は、国が厳選した製品・ディーラーを介して申請する仕組みであるため、次回解説する「一般型」と比較して補助事業計画書への記載内容がシンプルでハードルが低いという大きなメリットがあります。
また増額申請を行わなければ、厳格な「賃上げ目標(最低賃金・給与支給総額の引き上げ)」をコミットせずに申請することも可能です。
「一般型」では原則として複数の設備を組み合わせた複雑な省力化モデルが求められるケースが多いため、設備導入による省力化をスムーズに進めたい小規模事業者や中小企業は、まずこの「カタログ注文型」での申請から検討することをお勧めいたします。
⚠️ ご注意:本記事の内容は、執筆時点の公募要領・公式情報に基づいて作成されています。補助金の制度内容や申請要件は、公募回ごとに変更・更新される場合があります。実際に申請を検討される際は、必ず[中小企業省力化投資補助金 公式ポータルサイト]等で最新の公募要領をご確認ください。
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